「橡(トチノキ)」

軽井沢彫家具の特徴は、そのヨーロッパ風フォルムと桜に集約された彫刻に加え、簡単に分解でき、また組み立てられることにありましたが、その技の裏付けとなったのが素材でした。
主な材料は橡(とち)の木、ほかに朴(ほお)、桂、科(しな)などの広葉樹の100年以上たったものを使います。
特に橡の木は堅牢で、キメ細かく木目がきれい、しかも粘り気があるために緻密な彫刻が可能であり、加えて、数年をかけて十分に天然乾燥し、更に風通しよいところで保管した木材は狂いも来ず高い品質を保ちます。外国人の要望には、ぴったりの材料だったわけです。

美しい杢目(※)、粘り気を持った橡の木は豊かな四季の賜物で、外国材の及ぶ所ではありません。しかし近年、家具づくりに適した大きな橡の木の入手はたいへん困難になっています。
それゆえ国産材で本来の軽井沢彫家具・工芸品をお届けすること……これはシバザキだけが出来る事として、今後もこだわりと自負を持って、良品を作り続けて参ります。
ちなみに街路樹として見られるマロニエは同じトチノキ科ですが、残念ながら軽井沢彫家具には適していません。

(※)杢目(もくめ)
木目の紋様の中でも特に装飾価値が高い美しい紋様を「杢」と呼びます。 その名称は連想的につけられているので、諸々の呼び名があります。 橡の木の杢目は「山鳥杢 (やまどりもく)」や「縮杢 (ちぢみもく)」、あるいはバイオリンなど弦楽器の甲板に 重用されたことから「バイオリン杢」とも称されていて、この名称は、まさに西洋と東洋が融合した軽井沢彫に 通じる言葉であると申せましょう。